脱却した先にあったもの(過去編)
色々な自分の欲が見えて、色々な解決策をとろうとしていた。
そうした中で新たに気付いたことが多少ある。
自分には必要なことだから、昔の話をさせてほしい。
みやこは犯罪級の大雑把さと言われていた。
今年の目標は「丁寧にすること」と尊敬する上司からよく言われ、そこそこ気を付けはしてたのだがやはり大雑把だ。
自分でああ大雑把だな、と自覚することもある。作画も細かい丁寧さが足りないと非常に思う。
しかし忙しくて無意識でやることがどうにも大雑把だったようで、久々に丁寧を聞いてしまった。
とかくどのシーンでどれが大雑把か、を認識することから始めている。あと暗算でゲーム系のアプリ入れてみたら底辺すぎて色々自覚した。
さて、その原因は何故だろうと考えてみた。
小さな時分からそうだった。
何も気にしない。
何故だろう。
必要がないからだった。
みやこの育った環境は、経済的には悪くなかった。
けれど、好きなものはいつも捨てられて許されたことがない。
5歳の時父の部屋でらんま1/2が6巻くらいまであって、大好きになった。それはもう好きで好きでおもしろくて、いつも優しい母方の祖母(車で7分の所に住んでいて、よく会いに行っていた)がねだる度に買ってくれた。
5冊か10冊で、母がついにキレてみやこはマンガ禁止令が出てしまったし、買ってもらったものも捨てられてしまった。
それでもマンガが好きになってしまったから飢えて飢えて、母の買い物をチャンスと、そのあいだひたすら立ち読みをしてた。もうヒモがかかってなければなんでもよかった、ジャンプサンデーマガジン各々の月刊誌、ガンガンウルジャンヤンマガあとは分厚いエロ本、レイプもの鬱百合もの宇宙人触手誘拐ものなんでもござれ。
コロコロとか少女マンガは付録のためにいつもヒモがかかってたから読んだことがなかった。高校以来ハマるジャンルは何件かにひとつはコロコロ系になるけれど、それはついぞ知らぬこと。
立ち読みは中学で10冊以上を超え脳の許容範囲をオーバー、先週か先月かの話を忘れてつらくなるまで続いた。
ゲオやブックオフという存在は高校になって自転車で行ける距離範囲が長くなるまで知らなかった。近所にはあったのだ、自転車10分、今ならあっという間。けれど行っていいものとは思わなくて、距離が遠くなる高校という言い訳を手に入れるまで行けたことがなかった。
友だちと行ったことはない。
小学の低学年で仲の良い子がいて、その子の家族が海に行くので一緒に行こうと誘われて、喜んでOKしたけれど、その数日後、母親が親戚が死んで葬式があって日が被る〜などと言われて、泣きながら電話で謝って断った。
断ったらそれは嘘で、そのくらい言わなきゃ信用性がないなどと言われて、それ以来(ああ友だちに何か誘われても家以外行けないんだ)と思った気がする。
なんとなく、友だちを名前で呼べなくて、キミなどと常に呼んでいたら「私の名前覚えてる?!」と怒ったように言われて、覚えてたけど名前を口に出すことはできなかった。
なんとなく何かが怖かった。距離が縮まったりどこか行こうなどと言われることが怖かった。
自分の家に友だちが来たことは累計3度ほどか。マンガもゲームも何もない家で、近づきにくい父方の祖母しかいない、そんな家に招待する気はこちとらさらさらなかった。
関係は、あるのだろうか。
それとも自分の被害妄想の思い込みなのか。
父方の祖母は、母にとって姑だ。
母は姑が大嫌いだった。
磁石が反発しあうように人間的に受け付けないようだった。
母が嫌いな祖母が、みやこはなんとなく怖くて近づかなかった。
10年以上たって、その祖母が亡くなって数年たって、知ったことが幾つかある。
・祖母はみやこの内面とそっくりだ。よく父が言う。父は遺伝や家系が大好きの気にしいだ。
・祖母は嫁夫婦と食事を共にしたがっていた。(母が二階でご飯を作り、みやこが下に運んで別階で食べていた)
・みやこの赤ん坊の頃のビデオを見たら、祖父もいる居間で母が非常に気まずそうな緊張状態だった。
・祖母は大変美人でモテてモテて、外交官や実業家からプロポーズされていたらしいが、祖母の祖母がそんな胡散臭いもの!と気弱で真面目な警察官と無理にくっつけた。
みやこも倒れる前の祖母から一度だけ祖父はレイプ魔だと聞いたし、自分の可能性を摘んだ祖父たちを憎んでいたんだろう。
祖母は大変ハキハキと言う、自分を強く持った人で、芸術家のように美しいものを愛で、昔は1人で旅行などもよく行っていたらしい。
それでも犬を飼ってから1年目で倒れて、延命を希望しなかったけれど父の意向で延命して、3年か4年病院を回され亡くなった。みやこが高校の頃で、みやこは近くの病院なのに1度しかお見舞いに行かなかった。
気にはしたもののなんとなくの言い訳を続け、やっとお見舞いに行き、亡くなったのはその月だっただろうか。
今なら、祖母のきもちがわかるし、確かに似てるのだろうと思う。
動物が好きだ。美しいものが好きだ。どこかに行きたい。考えるのが学ぶのが好きだ。スマートなのが好きだ。楽しい方がいい。物事は白黒つけすぎてグレーみたい。なついてほしい。
今のみやこはそう言える。
けれど昔はただの怖い人だった。
小学生の頃、家庭に問題ありそうな同級生が、家にばれたくないからと勝手に私の名前を使って何か新聞か発表か、応募して賞をとり、それをいち早く知ったのがその祖母で非常に喜んでいたが、みやこはすげなく知らぬと言った。
孫というポジションならばできる孝行を、なにもしなかった。
本当に何も気にしなかった。
全て滅びればいいのにと厨二めいたことを思う冷めたクソガキだった。
ちなみに父方の祖父とは小学生のとき死ぬ前に1度しか会ったことがないが、どんな事情だったのかいつから入院してたのか聞いたことがない。
母方の祖父はみやこが生まれる前から死んでいた。
母方の祖母は、みやこの面倒を甲斐甲斐しく見てくれていつも優しかった。
けれど母方の祖母が自分の好きな植物や花のことを話すのに興味がないと一蹴し、作ってくれたオムライスやおかずをイメージと違うと拒否したりしていた。子供らしい、そこらに売ってる安い甘いお菓子が食べたくて、まあ与えられなかったのだけれど。
母方の祖母の家にピアノがあって、みやこはピアノの練習という名目で毎週か毎日か忘れたが祖母の家にいた。
みやこは強制されるピアノが嫌で嫌で泣いて逃げて鍵もかけたり窓から逃げたりもして、尻叩かれたりいつも怒られてたっけな。そのときの祖母よ記憶はないけれど、いたなら心を痛めてただろうか。
思い通りにならない孫、娘。
祖母は亡くなる数日前にみやこをいつになく真剣に抱きしめた。小学生のみやこは???としか思わなかった。思えば親類に抱きしめられた記憶はあれしかないのではなかろうか。乱闘で父の金的した記憶は数年前に1度あるが。
祖母が首吊り自殺だったことをその10年後に偶然知って、それまでみやこは抱きしめられたことを忘れてすらいた。多分父も当時事実を隠したことを忘れていたのだが。
このこと前も言ったかな。果たして記憶がもう曖昧。
好きなものは無かった。
誰かに見栄を張るところも無かった。
誰とも同じスタートに立たず、共通の話題もないのに、対人関係において何を気にかけることがある。
好きなことは禁じられて、テストの点と習い事のピアノさえやってる雰囲気を出していれば他に何を気にかけることがある。
みやこの大雑把さは、そうやって、小さい頃から何も気にしなかったために育まれてきたのではなかろうか。
20年何も気にしなければ、ここまで大雑把になれるのだ。恐ろしい。
そうやって何も気にかけずに生きて中2になって、ああ何もできないと思った。
料理も家事もできない、勉強しかできない、何かあったら死ぬなとおもって、包丁で手首を切ってみようとしたけど怖くてできなくて、
(死ぬことすらできないのか)
と絶望して、自分の勇気のなさに失望して、ファンタジーのラノベで雑学が命を助けたことを思い出してひたすら本を読むことにした。
許される範囲でできることがそれしかなくて、学術書ノンフィクションなんでも読んで、わかるまで覚えるまで5.6回読んで「きちんと本を読む」ことができるようになった。
でもテスト範囲じゃないのに何でそんなものを読むと毎日のように言われたな。
ちなみにみやこの家は共働きで、みやこは学校から帰ると母方の祖母の家まで1時間半ほど歩いていって、ピアノの練習をしていた。
ピアノは好きじゃなかったけれど、辞めていいと言われたとき、ピアノを辞めた時間ですることが何もないなと思って、とりあえず指が動くことが唯一の人よりもできる取り柄だから、続けることにしていた。
なにより誰もいない家で1人でいられるのがうれしかった。
家一軒まるごとみやこの隠れ家。
その解放感がうれしくて、父方の祖母が倒れてからは犬のまみちゃんと長々と散歩しながら通った。
2階に布団出してオナニーしたり、テストぶちまけて隠してたり(100点でも93点でも、何も親に見せたくなかった)高2になってコロコロ系で復オタしたらアニメを録画して何度も何度も何度も見てたな。
なんとなく米を炊いて祈って、良いことを何もしていない存在していることが罪のクズという罪悪感を埋め合わせたくて、お仏前を作ってひたすら手を合わせたり、お経暗記したりしていた。
それだけの日々。
数年に一度くらいみやこを常人と間違えてマンガを貸してくれた人が2人いた。
その気はなかったのだけど、シミやら端折れ掠れ、ひどい状態になって返された。みやこは普通に扱ってるつもりなのに何でこんなにボロボロになるんだろう?と返した。
おもしろいほど人間としてなっていなかった。